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AAC2024 最終審査結果

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「AAC2024」は、10月4日に最終審査が行われ、最終優秀賞1点、優秀賞2点が決まりました。

最優秀賞

最優秀賞

「Be yourself」
中居 瑞菜子(なかい みなこ)

東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専攻 研究生

素材  : 漆

受賞者のコメント
この度、最優秀賞に選んでいただき大変光栄です。AAC2022に参加して以来2回目の入賞で、学生として最後のチャンスだったので今回こそ絶対に最優秀賞に選ばれたいという思いで3ヶ月間制作に励んでまいりました。前回の反省を踏まえて制作する中で私らしい作品を作ることができたと実感し、技術的にも成長できたと思います。
審査員の方々に直接アドバイスを頂けたことは大変嬉しく、勉強になりました。
作品を公共の場に設置するという夢を叶えることができ、作家活動の重要な節目になったと思います。今後この作品が多くの人の目に触れることが楽しみです。
今回いただいた素晴らしい経験をもとにこれからも作家として技術を磨いて精進していきたいと思います。
審査員講評
 今回の3作品はいずれも非常にレベルが高かったです。中居さんの作品は、ここに住む方々にとって、日々を共に過ごし、作品が育って生き続けるという視点を持った、素晴らしい作品でした。実際に設置してみて、外部の道路から少し見える部分や、近づいて一層よく見える場面で、この建物と一体となった作品の面白さが感じられ、とても魅力的でした。(鈴木芳雄)

 中居さんの作品は、本当にクオリティが高く、サイズ感や見せ方も非常に優れていました。一つ一つのかたちが非常に抽象的に処理されており、スタイロフォームでのモックアップも完璧に仕上がっていました。思わず「やりきりましたか?」と尋ねると、「はい」と答えてくれました。色についても、漆の発色は一般的に渋めの印象ですが、マンションの石やタイルといった硬質な素材の中にこの作品が加わることで、空間が一変し、ドキッとするような感覚を覚えました。これは作品の持つ力だと思いました。非常に細やかな気配りがなされ、形のギミックもあり、何度見ても飽きない、味わい深い作品でした。(三沢厚彦)

 中居さんの作品は漆という素材自体が防腐・防水効果など、木を無時間的なものにする素材ですよね。それを通常であれば朽ちていく草木に使ったということで、素材とモチーフのある種のせめぎ合いというか、抵抗みたいなものがすごくうまく作品になっているなと思いました。デザイン的にもどこかで見たことあるような形、ちょっと懐かしい昭和のファンシーなテーブルクロスの柄みたいな感じもありつつ、ちょっと未来的な感じもあったりして、見たことあるようで見たことないもの。無時間的ですごく面白いデザインだなというふうに思い、今回最優秀賞に選ばせていただきました。(藪前知子)
 

最終設置

最終設置

近日公開予定

優秀賞

優秀賞

優秀賞

「方舟」
三原 航大

大阪芸術大学大学院 芸術制作 工芸領域ガラス工芸専攻

素材:ガラス、セメント、弁柄、鉄粉

受賞者のコメント
 このコンペを通じて、限られた制作時間の中で効率的に作業を進める方法を考えたり、これまで直面したことのない問題にどう対処するか模索したりする中で、実践的な思考がより一層鍛えられました。
また、審査員の方々による自分の作品への講評やアドバイスは、これから自分がどのように作品と向き合っていくかを見直す大きなきっかけとなりました。
単に自分が表現したい、作りたい作品を制作するだけでなく、その作品を見た人々がどのように感じ、何を思うのか、そして自分のメッセージがきちんと伝わっているかを考えることが重要だと学びました。
今後は、自分の手を離れた後でも作品が自立し、しっかりと意味を持ち続けるような作品づくりを心がけたいと強く感じています。
 
審査員講評

 三原さんの作品については、マンションが建つ場所に関する徹底的な調査が印象的でした。
私自身、東京生まれ東京育ちですが、知らなかったことを教えていただきました。中居さんと同様、住民と共に時間をかけて育っていくような感覚が、作品にうまく込められており、非常に歓迎される作品だと思います。また、照明によって一層引き立つ作品であることが、プレゼンテーションでよく伝わりました。今後の彼の作品にも、大いに期待し、注目していきたいと思います。(鈴木芳雄)

 三原さんの作品もガラスを使ったものでしたが、遠藤さんとは対照的に、ガラスを専門的に扱った素晴らしい作品でした。戸越銀座の歴史をコンセプトにした作品でしたが、少しエイジングが気になりました。フィニッシュはとても難しく、素材に対するコーティングや着色など、様々な要素が関わってきます。特にガラスは固着が難しく、有機溶剤を使用しなければならない場合が多いのですが、その有機溶剤がべんがら(酸化鉄)の発色を鈍らせてしまったのかもしれません。(三沢 厚彦)

 三原さんの作品は、ガラスという恒久的な素材を用いて、戸越という場所の歴史をどのように表現し、マンションの住民とどのように共有していくかをテーマにしていました。テーマとしては、この土地に最もフォーカスした作品だと感じました。ただ、なぜこの素材なのか、なぜこの形なのかという点で恣意的な選択をしなくちゃいけない、ある意味ではフィクションというか嘘を入れなきゃいけないというところがあって、審査員の中での議論があった部分ですが、エイジングは少しトゥーマッチだったかなと惜しさを感じました。(藪前 知子)

優秀賞

優秀賞

「黎明の途」
遠藤 由季子

 富山ガラス造形研究所 研究科 2年

素材 :ガラス

受賞者のコメント
 この度は、優秀賞に選出いただきありがとうございます。
実制作というまたとない機会をいただけたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。
パブリックな場への恒久展示を目指す上で、考慮すべき点や困難も多く、それでもこうして完成した作品を実際に展示できたことを大変嬉しく思います。
審査員の方々の講評を通して、自身の未熟さと伸び代を強く実感しました。今回の経験を活かし、より良い作品を作っていけるよう、研鑽を重ねていきたいです。
 
審査員講評

 遠藤さんの作品は、壁を支持体とする性格上、仮の壁で見なければならない不利さはありました。実際に壁に設置してみながら、高さを調整したり、画面からはみ出すような演出をするなど、さらに手を加えることで一際引き立つものになるでしょう。(鈴木 芳雄)

 遠藤さんの作品は、工業製品ではあまり見られないクラックやガラス素材をそのまま見せる大胆なアプローチが特徴でした。2パターンのガラスの扱いがあり、その見え方も非常に素晴らしく、長い時間をかけて共有することで、さらに多くの発見があるように感じました。
ただ、エポキシの使い方には少し工夫が必要かなと思いました。異素材との接合がポイントになるので、ガラスを接合する際には大胆に金物を使っても良いかもしれません。接合部分をあえて見せることで、ガラスの透過性が強調され、良い効果が得られるかもしれないと感じました。今後も素材に対するアプローチが楽しみです。(三沢 厚彦)

 遠藤さんの作品は逆に工業ガラスがクラックしていく、脆さ、時間とともに朽ちていくものを技術として、ガラスに取り込んだということで素材に対してある種の抵抗を生み出すということがすごく先進的で、芸術作品としてもすごく面白いコンセプトだと思いました。恣意的な選択で言うと、なぜこの形なのかというところでもう一工夫があるとよかったのかなと思います。最初のプランだと全体の形自体がその崩壊していくような形だったのですが、最終的な形にもある種のフィクションとしての説得力がもう少しあったらより優れた作品になったかなと思いました。(藪前 知子)

最終審査当日の様子

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