AAC2025
「AAC2025」は、10月21日に最終審査が行われ、
最終優秀賞1点、優秀賞2点が決まりました。

AAC2025
最優秀賞
広島市立大学大学院 芸術学部 造形芸術専攻
まず、最終審査に進まれた3名の作品はどれも非常にクオリティが高く、力のあるものでした。審査は作品の優劣を決めるものではなく、どの作品も毎日見ても飽きない、新鮮な気持ちにさせてくれるという点で審査員一同の意見が一致していました。 その中で今回の審査の決め手となったのは、作品と「空間と場との相性」です。最優秀賞の劉さんの作品は、家から3本の木が生えているイメージで、作者がご自身のパートナーや猫という「家族」を重ねていると聞き、このマンションに住まう多様な家族が家を作っていくイメージと重なりました。 また、設置場所はそれほど奥行きのある空間ではありませんが、劉さんの作品はレリーフに近く、比較的奥行きが浅く作られています。それでいて漆の滑らかな立体感や、光の当たり方でキラキラと光る螺鈿(貝殻)の表情があり、絵画とは異なります。時間に応じて表情を変えるこの作品が、住民が「ほっとできるような空間」に最もふさわしいと判断しました。
(木村絵理子)
劉さんの作品は、彫刻と漆が繋がったような作品でした。漆の作家は技術に走りがちですが、彼の場合は漆の肌の質感をモチーフと調和させ、非常に柔らかく温かい感じの作品に仕上がっていると思いました。
(小山登美夫)
劉さんの作品は、重ねられた漆がクリムトの森の絵のように、物質的な強さを持って木を表現しており、絵画的でありながら彫刻的な素材とのやり取りが魅力的でした。
(中谷ミチコ)


AAC2025
優秀賞
富山ガラス造形研究所
研究科 1年
この度は、優秀賞に選出いただき⼤変光栄に存じます。
初めての公共の場へ向けた制作となりましたが、過ごした約 3 か⽉間には学びや発⾒が たくさんあり、とても貴重な経験をさせていただきました。
既に存在する空間がより⼼地良いものとなるよう、⾃分は何を以て貢献できるかという ⾯に意識を向けるきっかけとなりました。
普段はガラスを専⾨に扱う環境に⾝を置いているので、審査員の⽅々それぞれの視点か らコメントをいただいて、素材に捉われず視野を広げる⼤切さを改めて実感しております。
困難が幾度も⽴ち現れ未熟さを痛感しましたが、その都度諦めずに道を探したことがす べて、これからの制作において糧となると感じております。今後も視野を広く持ちながら、 制作研究に精進してまいります。
鈴木さんの作品はガラスの重なりが美しく非常に魅力的でしたが、もっと自然光が降り注ぐ場所が似合うかもしれません。
(木村絵理子)
鈴木さんの作品は、ガラスの美しさが結晶化されているようでした。
(中谷ミチコ)
鈴木さんの作品は、板ガラスの色の美しさが際立ち、物体としてクオリティに文句のないものでした。
(小山登美夫)

AAC2025
優秀賞
東京藝術大学大学院 美術学部 デザイン学科
このコンペティションに参加したことで、自分の作品を見直す良い機会になったと思います。 自分が作品を通して何を伝えたいのか、そしてそれをどのように伝えるべきなのかを常に考えながら制作していました。 ただ好きなように作品を作るだけではなく、実際にマンションに設置され、入居者の方々と共に存在することを想像しながら制作することは、デザイン的な視点も求められ、多くの学びがありました。 また今回、優秀賞という大変ありがたい賞をいただき、異なるジャンルのプロフェッショナルである審査員の方々とお話しする中で、自分の今後の活動についても改めて考えることができました。今回の作品を作り続けて良かったと心から思っています。
佐々木さんの作品はエッジが効いており、クリエイティブな刺激を受けるものでした。
(木村絵理子)
佐々木さんの作品は、クレバーな印象で、素材に惹かれているのを感じ、今後も作り続けてほしいと思いました。
(中谷ミチコ)
佐々木さんの作品は、重い石と人工的なパイプを組み合わせ、石が浮いているという、彫刻家とは異なる立体の考え方が面白く、素材の研究も感じられました。
(小山登美夫)
受賞者コメント
このたび最優秀賞をいただき、大変光栄に思います。 日々の制作の中で、木材や螺鈿、漆といった素材と向き合いながら、身近な植物や景色の断片を通して、日常に潜む詩情を表現したいと考えてきました。 今回の受賞は、これまでの取り組みが少しでも多くの方に届いたのだと感じるとともに、今後も作品制作に真摯に向き合っていく決意を新たにする機会となりました。 私の作品を通して、見る方が身の回りの小さな美しさや幸せに気づき、穏やかな時間を感じていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。